バンコクのデモと旅行の危険性

バンコク デモ

観光シーズンを迎えているタイが反政府デモで揺れています。昨日1月13日にはバンコクを占拠するという予告通り、バンコク市内の主要交差点を11万人のデモで封鎖しました。今回の反政府デモを主導しているのは野党の民主党(反タクシン派)です。インラック首相が退陣するまでデモを続けると表明しています。

報道によると、長期化が予測されるデモの影響を受け日本発着ツアーのキャンセルが相次いでいるそうです。シンガポールや香港発のバンコク線も2月までキャンセルするという話も出ているので、タイ経済に与える影響も少なくはないでしょう。このニュースを聞いて実際に旅行のキャンセルをした方も多いのではないでしょうか。

タイの反政府デモといえば2008年と2010年にも大規模なものが起きています。2008年は空港占拠、2010年は軍によるデモ弾圧で90人以上の死傷者が出るなど、日本の報道でも大きく取り上げられたので覚えている方も多いのでないでしょうか。2010年のデモでは日本人カメラマンの方も1名犠牲となっています。

デモの構図とタクシン

タイにおけるデモの構図は、簡単にいうとタクシン派(赤シャツ)と反タクシン派(黃シャツ)による権力闘争です。反政府デモと言ってもどちらの派閥が政権を握っているかによって変わってきます。

photo credit: Ratchaprasong 2 via photopin cc

タクシンとは警察官僚出身の元首相で、現首相インラック氏の実の兄になります。

タクシンphoto credit: craig.martell via photopin cc

タクシン氏は2006年に軍のクーデターで首相の座を失脚してから、事実上の亡命生活を送っていますが、今なおその影響力は強く現政権もタクシン氏の傀儡政権と言われています。

インラック首相photo credit: itupictures

タクシン派と反タクシン派の支持基盤

タクシンの掲げた政策はタイ国民の半分以上を占める貧困層に手厚い内容のため、支持者の多くは地方の農民になります。今回の反政府デモの支持者である反タクシンは都会の富裕層です。現政権はデモを受け、国民に意思に委ねるべきとし2014年の2月2日に解散総選挙を表明していますが、タイ国民の6割は貧困層である地方の農民のため、選挙が開催されても野党が勝利することはないと考えられています。そのため今回の反政府デモはインラック首相が退陣するまで続けると表明しており、デモの長期化が懸念されています。

デモの危険性

テレビでデモの様子を見ていると、あまり緊迫している様子が伝わってきません。テレビカメラにピースする人や、道端に椅子やシートを並べ談笑している人、まるで野外フェスのような雰囲気です。

photo credit: Szymon Kochanski via photopin cc

2011年に訪タイした時にタクシン派のデモがあり、幹線道路が封鎖されデモが開催されていましたが、屋台や赤シャツグッズを売っている露店が出て、さながらお祭りといった印象でした。

実際、デモ参加者のほとんどはお祭り気分だと思います。ただし、一部に過激派がいるのも事実であり、過去にはショッピングモールが放火されたことや、発泡事件もありました。今回のデモでも死傷者が出ていますので、旅行者が不用意にデモに近づくのは大変危険な行為になります。

13日のデモで道路が封鎖されたのもアソーク交差点や、セントラル・ワールド周辺など旅行者がよく行くホテルやショッピングモールが多いエリアです。しばらくはこの辺りには近づかない方がいいでしょう。

また、デモ隊に遭遇しても写真を撮ったり、不用意に赤いシャツや黄色いシャツを着たりするなど、刺激するような行為は避けた方が無難です。

デモの今後

今後、デモがどう拡大していくかにもよりますが、現状では2010年のようにデモ隊と軍との衝突が起きる可能性は少ないと思います。90人以上の死傷者を出した2010年と大きな違いは、今回のデモがタクシン派(赤シャツ)によるものではなく、反タクシン派(黃シャツ)ということです。

2006年にクーデターを起こし、タクシン氏を失脚に追い込んだのは軍部です。現在は中立的な立場をとっていますが、軍が今回のデモを続ける反タクシン派を力で制圧するとは考えにくいわけです。ただ、警察はタクシン派が握っています。現在は大規模なデモはバンコクだけですが、各派、軍、警察のバランスにより情勢が変わってくるとは地方都市へも広がっていくかもしれません。

まとめ

以上のことを考えると、しばらくバンコクへの渡航は控えた方がいいかもしれません。危険ということもありますが、観光地でデモが行われているため、行っても楽しむことができないと思います。どうしてもタイに行くなら、アユタヤや南部のリゾートなど地方都市へ行くことをオススメします。

こんなタイミングの悪い時ではありますが、バンコクのガイドブックが発売されました。